ゴースタ特別編 〜中国遠征2009〜

2009.5.5 アジアチャンピオンズリーグ2009 グループリーグ第5戦
天津泰達(中国) vs 川崎フロンターレ(日本)


AFCチャンピオンズリーグ2009(ACL)予選リーグもいよいよ大詰め。
既にラウンド16進出を決めている我が川崎フロンターレは
この第5戦、グループリーグ1位突破を賭けて中国の強豪・天津泰達と対戦することになりました。
決戦の舞台は中国の首都・北京から南東100kmの場所に位置する天津。

この「ゴースタ特別編 〜中国遠征2009〜」では、
中国という近いようで遠い未知の国を満喫しながら
アウェイ天津の地へ川崎から遠征したサポーターの様子をレポートします!

  中国遠征に出発!

5月4日午前7時、成田空港。
中国・天津遠征ツアーに参加するサポーターが続々と集まってきました。

今回のツアーもまた、川崎華族トラベル事業部が中心となって企画した「川崎フロンターレ応援グループ連合ツアー」。地元・中原の焼肉・北京前集合が早朝5時だったということもあり、みんなちょっと眠そうです。

折からの新型インフルエンザ大流行の影響もあり、成田空港は厳戒態勢。サポーターも例外なくマスク姿です。
  正真正銘の北京へ

一行はまず空路で、焼肉屋さんではない正真正銘の北京を目指します。成田から北京国際空港までは約4時間のフライト。意外とあっという間の到着です。

なんだか北京は空気が悪そう。
黄砂の季節は終わったらしいのですが、砂ぼこりで空が霞んで見えます。

しかもこの時期で気温も既に30度近く。
暑いです!
  今回の拠点はここ

一行はチャーターしたバスに乗り換え、北京市内へ。
毎度のことながら、海外遠征ではこういった異国情緒がサポーターの気分を高揚させます。

今回、我々が拠点とするホテルは北京の中心地・王府井にある「北京富豪賓館」。名前と外見は派手ですが、中身はいたって質素。良くも悪くもない普通のホテルです。
まぁ、どうせ寝るだけですからね。
  北京の街を散策

何はともあれ、まずは「敵を知る」ことから。
決戦を翌日に控えたサポーター一行は、午後の空いた時間を利用して北京の街を散策することに。

北京は歴史ある古都というイメージでしたが、さすがに昨年のオリンピック開催を経て近代化も随分進みました。それに何と言っても、人間のパワーを感じる街ですね!
  天安門広場

歩くこと約20分、ひらけた場所に出ました。
ここが有名な天安門広場。中国の激動の歴史を見守ってきた世界最大の広場です。百万人が集うことが出来る広場と言われても想像がつきませんけどね…。

そして、向こうに見える毛沢東の肖像画が掲げられている建物が天安門。ちょうど60年前、毛沢東はこの天安門楼上から広場に集まった群衆を見下ろし、中華人民共和国の建国を宣言しました。
  スケールがケタ違い

天安門広場、そして天安門と、ともに実物をまのあたりにして、その大きさ・広さにびっくり!とにかくスケールがハンパないって!思わずみんなで記念写真をパチリ

ところで、今回のゴースタ特別編「中国遠征2009」のリポーターを担当いただくのは、「みんなのチラ裏」の人気コーナー「テンメイ人語」で鋭い批評を連載中のテンメイさん。
さっそく、アツいレポートをご覧ください!
  20年前、この場所で

1989年、学生・市民のデモに端を発した民主化運動は徐々にエスカレートし、この広場に中国全土から数十万人の群集が集結する事態に発展、その鎮圧のために軍が行なった武力弾圧では、この場所で多数の学生・市民が尊い命を落としました。

現在は、多くの市民や観光客が憩う長閑な広場になっており、 20年前ここでそんな出来事があったことなど全く想像がつきません。
  天安門広場で応援体操

「さぁみんな、一列に並んで!タオル用意!」

ちょっとブルーになった気分を晴らそうと、みんなに声を掛けるやすなが64氏。サポーターの気分転換といったら、やっぱりこれ、アウェイ遠征でお馴染みの「応援体操」です!

「応援体操、はじめっ!」

その瞬間、どこからともなく現われたのは公安(警察)。なんと応援体操の中止を通告されてしまいました。政治運動と誤解されるため(?)、タオルやマフラーを掲げる行為自体がNGのようです…。なんだこの国は…。
  夕食は北京ダック

そうこうしているうちに日も暮れて、夕食の時間。北京のグルメといったら、やっぱりこれでしょう!
「北京ダック」

パリパリに焼いたアヒルの皮を削ぎ落とし、餃子の皮状のものにネギと共に包んで食べる料理です。皮だけではなくて肉も食べるのが本場北京の調理法だとか。

中華ならではの円卓を囲み、決戦前夜の決起集会。ターンテーブルをぐるぐる回し、あっという間に3羽のアヒルをぺろり。
  これぞ中国

夕食後、腹ごなしに土産物でも物色しようと、地図を片手に夜の街に繰り出すサポーターたち。

露店が並ぶ狭い路地、店員の威勢のいい掛け声、夜遅くまで人で溢れる屋台街…、この雰囲気、これぞ中国って感じですね!
  珍品の数々

ナガタ氏が何やら怪しい帽子を被って帰還。少々強引な客引きで知られる民族文化街の土産物店で購入した模様。

ナカヤマ氏はこれまた怪しい人民帽を被った上、小吃街の露店で買ったサソリの串焼きを手に持って帰還。サソリは1串20元(約300円)。油でこんがり揚がっており、おいしく頂けます

みんな北京の街を満喫してるようで何より。
こうして、中国遠征1日目も無事終了しました。
  北京の朝

中国遠征2日目。
アウェイ遠征時の日課になっている朝食前の散歩から1日が始まります。散歩はあえて路地裏へ。大通り沿いにビルが立ち並ぶ北京中心部も、1つ路地を入ればこんな感じ。生活臭がプンプン漂う昔ながらの街並みが縦横に広がります。

ほどなくして、朝の通勤ラッシュの時刻を迎える北京市街。ちょっと前まで北京市民の通勤手段はもっぱら自転車でしたが、最近では会社が郊外に移転してしまい、やむなく自動車やバイク・路線バスを利用している市民が多いとか。
あと、意外にも電動バイクが普及しているようですね。ちなみに信号は誰も守ってません(笑)
  寄り道

試合は夜ということで、午前中はまるまる時間が空いていたため、一行はちょっとだけ寄り道をすることに。

一行を乗せたバスは、北京五輪のメイン会場だった「鳥の巣」にも全く興味を示さず、北京の市街地を離れ、ハイウェイをひたすら北上。

一行が向かっている場所とは…
「敵を知る」上でどうしても行っておかなければならない場所、それは「万里の長城」です!
  世界遺産・万里の長城

「長城に到らざれば好漢にあらず」
これは、かの毛沢東が詠んだ漢詩の一部。「万里の長城に登らないやつは男じゃねえ」という意味ですね。

ということで、バスに揺られること1時間あまり。
やってきました、世界遺産・万里の長城!

さぁ、登ってやりましょうか、好漢になるために!
迎え撃つは、山々の尾根を伝い、果てしなく続くレンガ造りの城壁。これはかなり手強いぞ…。
  日本じゃありえないね

山頂にある望楼まで登り切ったからと言って安心するのはまだ早い。隣の山頂にそびえる次の望楼まで城壁はまだまだ続きます…。

写真ではなかなか伝わらないかもしれませんが、場所によってはアップダウンがかなりキツイです。

このあたりなんて、ほぼ垂直!
かんち氏はロッククライミングさながらに、両手両足を駆使して懸命に登ります。
  もうヘトヘト…

「万里の長城を一気に走り抜けるぞ!」
…なんて、長城マラソンにチャレンジしてはみたものの、地の果てまで続くコースを前に、あちらこちらで脱落者続出。

一方、到る所で国際交流に勤しむ元気なナカヤマ氏。
もしかして、これがサソリパワーなのか!?
  心強い仲間たちと合流

ちょっと寄り道するつもりが、ヘトヘトになるまで万里の長城を満喫することになってしまった一行は、再び北京を目指します。

その道すがら、北京郊外で路頭に迷っていたマナベ氏・今里氏を発見!2名の身柄を無事確保!今里氏が応援のドラムを担いでいたので一発で分かりました。2人とも、ついさっき空路で入国したばかりとのこと。

そうこうしているうちに、バスは北京南駅に到着!ここで一行はバスから列車に乗り換えます。現地の列車に乗れるということで、鉄道オタクのかんち氏は既にやる気満々です。
  新幹線で天津へ

ここ北京南駅からは、昨年の北京五輪に合わせ開通したばかりの中国版新幹線「北京天津高速鉄道・和詣号」で天津に向かいます。

この日の最高時速は350Km/h。
北京から約100Km離れた天津までの所要時間はわずか30分。2人仲良く駅弁を食べている間に到着してしまいました。ホントあっという間です。
  決戦の地・天津に到着

一行を乗せた新幹線は無事天津駅に到着。
天津市は中国でも有数の工業都市だけあって、天津駅周辺には出稼ぎ労働者が溢れかえってました。

ちなみに天津市中心部は19世紀以降、日本を含む欧米列強の租界として発展した経緯があり、その時代の古い街並みも残る観光地になっているそうです。

一方、我々が目指す敵の本拠地・天津泰達球場は、中心部から遠く離れた郊外にあるため、一行はここから再びバスに乗り換えます。
  天津泰達球場

仁義無用な交通事情にハラハラさせられながらバスに揺られること約1時間、天津市郊外の経済技術開発区(これを略してTEDAというらしい)にやってきました。ここには近年多くの外資系企業が進出しており、超近代的な建物もあちらこちらに林立してます。

その中から突如現われたのが、銀色に輝く天津泰達球場。奇抜な外観がユニークです。しかも、これまたデカイ!
  中国のトイレ事情

スタジアム敷地内にある公衆トイレに行ってみました。
トイレには管理室が併設されており、専任の管理人さんが常駐してます。

入口は自動ドアになっていて、結構立派な作りです。使用は無料。管理人さんへのチップも必要なし。ただ、備付けのトイレットペーパーはありませんでした。

使用後には、フレンドリーな管理人さんと人懐っこい番犬が見送ってくれます。用も足してホッとする瞬間、プライスレスです。
  サポーター、続々と集結

現地時間17時を過ぎると、旅行会社が企画する応援ツアーの団体も続々とスタジアムに到着。

日本人向けの入場口として指定された2号ゲート前は、青黒の応援グッズを身に着けた、既にやる気満々なフロンターレサポーターで埋まりました。その数、実に100名以上。

そんな日本人の集団を遠巻きに囲むのは中国人サポーターたち。このとき既に中国国旗を振りながら挑発を繰り返してました。
  入場時から厳戒態勢

入場に先立ち、中国側関係者やACLスタッフ、サポーター代表者などが集まり、入念にサポーターの応援エリアや入場方法を確認し合います。その結果、日本人サポーターだけ先に入場できることになりました。

こうして物々しい厳戒体制のもと、スタジアム入場開始!
持ち物検査はかなり厳重。ビン・缶はもとより、ペットボトルのドリンクはここで全て没収されてしまいます。紙コップに移し替えなんてサービスは一切ありません。
  スタンドからピッチを望む

なんとか無事(?)に、スタジアムに入場!
ここが天津泰達の本拠地・天津泰達球場。3万6千人収容のサッカー専用スタジアムです。

まず目に飛び込んできたのは、メインやバックスタンドのカラフルなシートカラー。赤色や橙色の座席が一見ランダムに並んでいます。これって何かのデザインなのかな?
…まぁ、どちらにしろ、こんなどぎついデザインは日本ではなかなか見られないよね。
  警備はやはり人海戦術

我々フロンターレサポーターの応援席として用意されたのは、バックスタンドのアウェイ側最上階の1ブロック。

ところで、相手サポーターとの緩衝地帯らしき空席ブロックはありますが、両者を仕切る壁もゲートもありません。
その代わりにいるのが、座席1つおきにギッシリと座った軍人さんたち。彼らが取り囲むスペースの中で応援して欲しいとのこと。いやはや人海戦術ですね…。
やっぱりここは礼儀として1人1人にご挨拶

「…ていうか、お前は誰だよ!?
  今回もやります!ステッカー大作戦

気まずくなった雰囲気を打開するには、やっぱりこれ!
特製ステッカープレゼント大作戦!

一昨年のイラン遠征時にも効果抜群だったこの企画。ステッカーのデザインも一新して今回もやります!

こうして相手との友好が図れるとともに、我らのホームタウン・川崎市を世界中の多くの人たちに知ってもらえるわけですね。
  諜報部隊?

日本人応援エリアのすぐ外側の最前列には、いかにも場違いな格好で観戦する現地の女性グループが。

どうやら彼女たちは、サポーターが掲げる横断幕やフラッグを逐一チェックし、問題のある言葉が書かれていないかどうか判断して、運営担当者に報告する任務を帯びているようです。

「川崎市民の歌」を歌うため、サポーターが一斉にマフラーを掲げた際には、彼女たちは携帯カメラで撮影したり、その写真を解析したりと、かなり忙しそうでした
  さぁ、キックオフ!

いよいよ選手入場です!
現地時間19時30分、決戦のキックオフ!

観客席のいたるところで振られる五星紅旗。
そんな光景を目前にすると、我々は日本を代表して世界を相手に戦っているんだということをあらためて実感します。
これぞACL!
  悪い予感が…

前半だけで2点を奪われるという最悪な状況で迎えたハーフタイム。殺伐としてきたサポーターの空気を察したのか、軍人さんたちの様子もどことなく緊迫感を増してきました。

そして悪い予感は的中し、試合は大荒れの展開に。
我々の応援席の真下の1階席にいる中国人サポーターは試合そっちのけで、真後ろにいる我々サポーターにまで罵声を浴びせ、挑発を繰り返してくる状況。
特筆すべきは、ゴール裏に陣取る純粋な天津サポーターは見たところ普通なのに、バックやメインで観戦している一般客の方が異常な行動に走っていたところですね。
  顔を上げろ、前を向け

そして響き渡るタイムアップの笛。
相手選手・スタッフによる度重なる悪質行為に完全にぶち壊されてしまった今日の試合、残ったのは1−3で敗戦という結果だけ。

がっくりうなだれる選手を励まそうと、試合が終わってもなお懸命の応援を続けるフロンターレサポーター。そんなサポーターのところに挨拶に来ようとした選手たちには、1階席からは容赦なく物が投げ込まれます。

テセは投げつけられたペットボトルを、躊躇することなくスタンドに向けて投げ返していました。
さすがテセ、漢だぜ!
  サポーターぶち切れ!

試合中からピッチへはペットボトルやトイレットペーパーなどが投げ込まれ、フロンターレの選手にも何度となく命中してましたが、試合が終わっても延々繰り返される中国人サポーターの挑発行為に、はじめは我慢していたフロンターレサポーターもついに堪忍袋の緒がぶち切れ!応援席は警官・軍人・サポーターが入り乱れ、大混乱に!

日本が、フロンターレが、そして我々サポーターが侮辱されているんです!分かっているつもりでも、あの現場にいたら冷静ではいられません!
   応援席でしばらく待機

ようやく落ち着きを取り戻したフロンターレ応援席。

日本人がこのまますぐにスタジアムを出るのは非常に危険という運営側の判断で、まず先に中国人サポーターを退去させるということになり、我々はしばらく応援席で待機することに。

彼らはスタジアムを去る間際まで、罵詈雑言を喚き散らしていました
  サポーターは全員無事

照明の落ちかかった薄暗いスタンドで、軍人さんに囲まれながら解放の時を待つサポーター

サポーターが軟禁状態からようやく解放されたのは、それからしばらく経ったあと。

とにかくみんな無事で何より。
  疲れた…

我々がスタジアムから脱出した時には、さっきまでの喧騒はどこへやら、さすがにもうスタジアム隣の広場には誰もおらず、散乱した大量のゴミだけがまるで戦場のような光景を醸し出していました。

全身全霊を尽くした命懸けの応援ですっかり疲れ切った一行は、アウェイ遠征恒例の打上げもする気もおきず、バスで北京のホテルに直行し、そのまま爆睡…。
  帰国の朝

昨夜の敗戦ショックからか、帰国の途に着くサポーターは心なしか言葉少な。しかし、いつまでも過去を引きずっているわけにはいきません!気持ちを切り替え、今回得られた教訓を今後の糧として、前へ進もうぜ!

今回の中国遠征、滞在は2日間という短い期間でしたが、中国という国の良いところも悪いところもまのあたりにできたような気がします。そして何より、アウェイで国際試合を戦うことの過酷さ・過激さを身を持って体感しました。サポーターとしてフロンターレをさらに強くするために必要なこと、それを確かに掴み取った貴重な経験でした。

さらば、中国。
  無事帰国しました

もう少し中国を旅したいと言うマナベ氏・今里氏の2人を現地に残し、それ以外のツアー参加者は全員無事に帰国しました。

今回の遠征で「最後の関門」と考えていた成田空港。
新型インフルエンザの検疫やら何やらで、入国審査はかなり面倒なことになるかと思いきや、意外とあっさりクリア。

さぁ、川崎に帰ろう。

中国遠征2009

2009年5月5日 天津泰達球場にて


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